心が軽くなる子育てご相談 精神科医・宮田 雄吾
vol.11 非行傾向のある子と友だちに…
「中学2年の娘がクラスで仲よくしているA子さんは、“万引きで補導歴がある”とほかのお母さんから聞きました。娘は、大人びたA子さんに自分にない魅力を感じるのかもしれません。娘の友だちづき合いに干渉するのもどうかとは思いますが、高校受験を控えている大事な時期ですし、何かの拍子に引きずられてしまっては……と心配です」
聞くべきは聞き、伝えるべきは伝えることが大切
精神科医として働いていると、うんざりするほど、しょっちゅうされる質問があります。
「心を病んでいる人の話をいつも聞いてると、先生も精神的におかしくなりませんか?」
冗談でいっているのかと思いきや、相手は意外と真剣な面持ちだったりしますので、こっちもマジメに答えます。
「精神科の病気はからだの病気と同じで、どんな人だってなるときはなります。私も一般の人と同じくらいの確率でなるでしょう。もちろん、心の病気の人と話したからといって、心の病気にはなりません。外科のお医者さんががんになったとき、がんの手術をしたせいだなんて考えませんよね。同じことです。もし病気になったとしたら、それは自分がそういう体質だったってことに過ぎません」
朱に交われば赤くなる。ついつい考えがちなもの。子どもがグレれば、グレ仲間のせいだといいたくもなるでしょう。でも実際、グレるのは、その子自身の問題に起因することが大半。グレ仲間とのつき合いを楽しいと感じること自体を含めて、本人の問題なのです。
さあ、今回の場合はどうか。
もしA子さんが現在もグレ子さんで、娘さんを現在進行形で万引きに誘っているならば、「万引きはしてほしくないし、万引きをする子とつき合ってもほしくない」と腹をすえて、真正面から話し合うべきでしょう。しかしA子さんが万引きをやめていれば、とくに気にすることもない。
そう考えると、まずすべきは娘さんに状況を聞くことです。聞くコツは、「気にしていることを率直に聞く」「気持ちの一部でなく、全体を言葉にする」の二つ。
具体的にはこんな感じです。
「A子さんは昔、万引きで補導されたと聞いた。今は万引きはやめているだろうか。やめていれば問題ない。ただ今も続いていて、あなたを誘っていたら心配だから聞いている。もちろん、万引きはしないでほしい。もう一ついうと、お母さんは、本来、あなたの友だちづき合いに干渉すべきでないと考えている……」
聞くべきは聞き、伝えるべきは伝える作業はやはり大切なのです。
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