心のSOS

子育て疲れ”解消のヒント 精神科医・宮田 雄吾

vol.11 "デート"に学ぶ子どもとの接し方

 「子どもともっと話しましょう」

 子育てセミナーでそう聞いて、日ごろから忙しくて子どもとかかわる時間があまりとれない千草ママ。「これじゃいけない。子どもともっと話そう」と一念発起。ところが家に帰ってわが子と話そうとしたもののハテ困った。どう話したらいいのかよくわからない。あれこれ話しかけてはみたものの、気のないそぶりのわが子ども…。そんなママに、ちょっとだけアドバイス。

 「デートを思い浮かべてみましょう」

 デートにおいて、あなたがいちばん大切だと思うものはなんですか。
 「何を食べたか?」それはただの食いしん坊。
 「どこに行ったか?」旅行会社じゃあるまいし。
 「何を買ってもらったか?」それだとなんだか浅ましい。

 これらのことが、いちばん気になるなら、そこにはまだそんなに愛はなさそう。いちばん大切なのは、「二人の間にいかに素敵な時間が流れたか」ということ。

 どうしたの、こうしたのと根堀り葉堀り聞かれては、素敵な時間は流れにくい。相手の気持ちを想像し合うなかで生まれる「息づかい」こそが、素敵な時間を生み出すのです。そして、その時間の蓄積こそが愛を確かなものにしていくのです。

 そうです。「何を話したか」はさほど大切なことではないのです。

 デートから学べることをもう一つ。

 最初から何もない場所でデートしたって、間がもたないし、相手のこともわからないから何をしゃべっていいかわからない。やはり最初は食事に行くとか映画や遊園地に行くとかが無難。

 二人で一緒に何かすることで話題も生まれやすくなり、沈黙の時間が訪れたとしても、それは自然なものとなります。その結果、二人の間にちょっと息が抜けるゆったりした時間が生まれやすくなるのです。

 子どもと交わるときに会話の達人になる必要はない。必ずしも言葉を介さないけれど、子どもの気持ちを想像しつつ、ともに過ごすゆったりとした時間の積み重ねが、子どもに確かなものを伝えるのです。

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